おうちでひたちごはん

近藤 恵美   
令和2年11月18日
  緊急事態宣言が発令された2020年4月。 我が家も在宅ワークに切り替わり,自粛生活になった。 テレビを点けると,病床不足が深刻化した医療現場と「ステイホーム」の呼びかけが映し出されていた。 買い物はネットスーパー頼み。 外出といえば,朝・昼・夜の散歩くらい。 毎年,多くの人で賑わう満開の桜並木もひっそりとしていた。 未知のウィルスへの恐怖と,中止になってしまった旅行や観劇。 暗い自粛生活の中,唯一の楽しみが「おうちでひたちごはん」だった。

 「おうちでひたちごはん」とは,市内のテイクアウト情報をウェブサイトに無料で掲載する,日立商工会議所の小売・飲食業の支援事業だ。ウェブサイトには店舗情報と弁当の画像,価格が掲載される。 営業休止しているレストラン,居酒屋,旅館なども,業務形態を変えて参加していた。 これを利用してSNSで発信すれば,市内の飲食店の応援になるのではないか。何より色々な弁当を食べることができる。「食べて応援」という名目の下,「#おうちでひたちごはん」のハッシュタグを付けて発信することにした。

 一件目は近くの居酒屋。初めて入る店だ。少し薄暗い店内には弁当だけが並んでいた。 壁に貼られたメニューはどれも美味しそうで,賑やかな夜を思わせる。 居酒屋に昼間,弁当を買いにくるという非日常感。自粛ムードの暗い気持ちが和らいできた。 持ち帰った弁当は,ベランダのテーブルで撮影をしてから食べた。 久しぶりのプロの味を目を閉じて味わった。人はなぜ美味しいものを食べると目を閉じるのか。出来心で検索してみると,犬や猫,パンダやハムスターも目を閉じて味わうそうなので,本能なのかも。 食後はSNSに感想と画像,ハッシュタグをつけて投稿。目的が出来ると楽しいし,元気が出る。 総投稿件数は22件。他県からも反応があり,微力ながらやって良かったと思う。 在宅ワーク期間が終わるまで投稿を続け,その頃には体重が5kg増えていた。


 自粛期間の終了後,飲食店の営業が再開された。 入店時には熱をはかり,手を消毒し,食事中以外はマスクをする。パーティションが設置されている席や,対面で座らないように椅子が配置されている席がある。このように対策されているところで外食を楽しむようになった。 しかし,昨日の茨城県の感染者は55人で,過去最高を更新してしまった。 また自粛生活になるようなら,テイクアウトを積極的に利用したいと思っている。 しかし,美味しい弁当も出来立てにはかなわない。 もとの生活に戻ることを切に願っている。